いしいしんじ『プラネタリウムのふたご』
2015/07/26
ある日の雑談
文庫にして本編519ページ。でもどんどん読めるから心配しないで。赤ちゃんだったふたごが、気がついたら大人になってる。笑
ふたごの話っていうと、宮部みゆきの「ステップファザー・ステップ」が真っ先に浮かぶんだけど、私だけ?
ふたごの頭のきれる感じが、哲と直に似ているせいかもしれない。思い出したのは。ちょっとませた子供の話って読んでいてすっきりするよね。
小さな村が舞台でね、「お父さん」の職業がプラネタリウムの解説員だから、ふたごはその解説を子守唄に育つんだ。二人の名前は、彗星からとってテンペルとタットル。すくすく育つふたごはちっこい頃から賢くて、変な質問して大人を困らせたり、たまーに悪巧みして怒られたり、毎晩交代でプラネタリウムを手伝ったり、忙しい。
ネタバレしないで説明するの、難しいね。
村人の殆どがパルプの工場で働いてて、憩いの場がプラネタリウムと酒場しかないんだけどさ、そこへ偶然やってきたサーカスに、ふたごは夢中になるのね。タネや仕掛けを見つけてやろう、なんて思ってなくて。素直に楽しみで、毎日講演を見に行くの。
一座っていう「外」の人と関わって、ふたごそれぞれの、テンペル、タットルっていう個性が浮き彫りになるのがこのあたり。
私はタットルの方に感情移入しちゃった。あー、こういう子供っぽいことした時期あったなって。何度も本を閉じて頭抱えてた。お恥ずかしいけど、ホントに(笑)まぁそうやって自分のリズムで話を進められるのも本の醍醐味だよね。
所々はさまる、星空の解説も私は好き。ただね、正直終盤のシーンは気に入らないんだ。状況が結構大きく動くんだけど、そこまでする必要あった? って思う。主張したい、表現したいことは分かるんだけどさ、あんなに不憫な目にあわせなくても、書けたでしょ。ちょっとおこ。
とはいえ、小さい子嫌いじゃなければ絶対楽しめると思うな。…返すのはいつでもいいからね。
©ぐりこ
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