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ウニ『師匠シリーズ』

      2014/10/13

 

 

「人が死んだらどこに行くか知っているか。どこにもいけないんだよ。無くなるか、そこに在るかだ」

 

私はオカルトとは文化、ミームだと考えている。まるで今は亡き星のようだ。存在していないのに、かつて発した光が今を生きる私たちの目にしかと届いて存在の像を結ぶ。偉人などもそうだ。エジソンに会ったことがないにも関わらず私たちは電話や電気、逸話を通じて彼を思い浮かべることができる。肉体はないのに私たちの心は像を結ぶ。かつて彼らが残した情報が人の水脈に乗って遥か遠くの地へ、未来へと伝播する。ロマンチックな話だと思うかもしれない。それはあなたがプラスのイメージをしているからだ。その負のイメージがオカルトなのだ。

あなたはオカルトを信じる? 信じない? どちらでもいいという立場だろうか。断言しよう。オカルトを閉め出すのは人間が人間である限り不可能だ。なぜなら、オカルトは物質的に存在するものではなく我々の心が孕み社会が孵すものだからだ。

私は気功に近いこと、魔術に見えることを起こすことができる。文化やミームなど人の無意識に沈み込んで固定されたものを私は基盤と呼ぶ。その基盤を振るわせるように状況を整えれば私が何をするまでもなく人は自身の心が生み出す像に肉体を反応させる。ドラゴンボールなどで手から気が出るという基盤が刻まれた人に手からの気功を実施するとより強く反応する。キリスト教圏ならキリスト教圏の、イスラムならイスラムに類する基盤が刻まれている。キリスト教圏で気功に近いことをしようと思えば私はイエスの伝承を利用するだろう。既にある基盤に作用させるのは容易い。

では、新しく基盤を作ることは出来ないのだろうか。もちろん出来る。例え何の事件性のない交差点だとしても花を置き続ければ、十年後にはそこで事故があったかのように語られる。花を置く私たちの手を離れて、合唱する、菓子を飾る人々に移って想像上の幽霊が一人歩きを始める。ただ基盤を新たに作るコストが高いだけだ。

人間が亡くなればどうなるか。霊魂などなくとも残るだろう。影響があったものなら尚更だ。そして、伝承して、途絶えるほど世代を経れば消える。そんなものだ。だから人間は名誉を轟かせ悪名を挽回しようとする。人間が消えても記録を後の生物が発見するかもしれない。無意識が過去に存在した人間の痕跡を拾えるとしたら、そして霊魂が存在するという基盤があればあなたの眼前を霊が覗くかもしれない。霊たちは今も画面の奥、裏側からあなたを見ている。

さて、この物語は元々、2ちゃんねるの一つの掲示板で投稿されていたものだ。著者の想いが実体のない電子情報に移され、読者の熱望、出版社の目利きに見出された。始めの投稿から十年を超えてこうして私の手に書籍として握られている。書となって実在を手に入れたこのシリーズはネットワークのない場所にまで流通できる。どこまで波及していくのだろうか。ここまでの発見は、掲示板時代から折に触れて考えていった集積だ。私は自発的に書いているという自覚があるが、このコラムさえも本シリーズが根付く基盤となるだろう。これを見たあなたがツイートするだけで私の知らない世界へ存在が流れ込む。いつか消えるのは必定だ。その前に世界の果てを見てほしい。

 

©たなかよ

 

 - たなかよ

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