南和友『蘇活力』
2014/08/15
京都府立医科大学を卒業後、ドイツ国費留学生としてデュッセルドルフ大学外科へ入局、日本人として初めてドイツ・ボッフム大学の永代教授に任命された医師、南和友氏の著書。大竹しのぶをはじめ、鎌田實,草野仁,林修,藤巻健史などの人々が帯に名を連ね、推薦文を書く。
本書の主張は明確で、「自律神経を整えて血流をコントロールし、健康な生活をおくる」こと。人間らしく充実した人生をおくる上で何が重要なのかを、定年を超えてなお現場で追求し続ける著者が辿り着いた現時点で最高の答えが、ここにはある。それは、活力は健康から生まれるということ。そして、健康は習慣によって意図的に担保することができるということだ。
日本の多くの医師が生涯に3000例の手術を経験するという。一方、著者の手術経験はすでに20000例を超える。そんな著者が、“私の元を訪れる患者さんの大半は、悪しき生活習慣が原因で健康を損なっています”と言うのだから、これは信じざるを得ない。西洋医学を本格的に学びつつも、むやみに薬を出せばいいというものではない、ということを経験をもって識っているのである。
本書で語られる著者の思想は、以下の3つのキーワードによって一貫する。すなわち、「交感神経」「副交感神経」「自律神経」である。従来は理性・本能として漠然と語られがちだったスキームを、「交感神経」「副交感神経」というアプローチから語り、交感神経優位のときには何が起こりやすいのか、副交感神経優位のときには何が起こりやすいのかを述べ、理想の状態を医学的に検証する。そして、自律神経の閾値を高めることで自己治癒力を高める方法を探る。著者の実践例がタイムスケジュールとして示されているのがありがたい。
ここに主張は完結し、習慣を構築して健康を作り上げる具体論が示されるのだ。曰く、「人の寿命は本来120年」。定年は単にターニングポイントに過ぎない。10年後・20年後のデファクトを目指し、本書を健康設計の指針としたい。
©たけと
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