Biblo


さっと読める書評サイト

*

旧約聖書『ヨブ記』

      2014/08/15

 

 

初めて旧約聖書を読んだ。諸書というカテゴリーに分類される有名な書物、「ヨブ記」である。

非の打ち所がない善人ヨブは、神と悪魔の談合によって残酷な試練を科される。財産を全て奪われ、耐えがたい皮膚病に苦しみ、見舞いに来た友人からは、「お前の苦難は、何か罪を犯したからなのではないか」と疑われてしまう。初めは自分を呪い神に嘆き訴えていたヨブだが、友人と口論を続けるうちに、神への不信感を表明するようになる。

ヨブ記のテーマは、「義人の苦難」である。にっちもさっちもいかなくなった者の心の叫びが、鬼気の迫った言葉で描かれている。本文は160ページ程度と少なめだが、その一言一言は実に重く、読了の際に感じた作品の密度は、通常の厚さの本に勝るとも劣らないものであった。

ヨブ記の全てを理解できたわけではない。注釈を参考にしても、注釈の注釈が必要になるほど、私の予備知識がなかったのである。それでも読み切ることができたのは、字数の少なさだけでなく、ヨブ記の展開が秀逸だったことが関係していると私は考える。

ヨブの絶え間ない感情の変化、いきなり登場して文句を言いだす謎の年下の人物、神の唐突な自慢の列挙、ヨブの主人公らしからぬ変わり身のはやさと、神が下した予想外の判決。話している内容は非常に深刻なのに、見方によってはコメディに思えてしまうほど、展開が突飛で奇抜なのである。

専門家はこれらの不思議な部分を、研究すべき箇所、もしくは芸術表現として捉えるのだろう。しかし予備知識のない者には、何が何だか本当にわからない。だがそこが妙に印象深く思えて、面白味を感じてしまう。ヨブ記には、一見様でも虜にする奇妙な引力があるのである。

短いが、浅いわけではない。わけわからずとも楽しめる。ヨブ記が旧約聖書の中でひときわ人気がある所以は、そこにあるのかもしれない。

 

©つじどう

 

 - つじどう

ad

ad

  関連記事

深澤七郎『楢山節考』

    歳をとっても、歯が綺麗に生え揃っているのは恥。ひ孫の …

村上春樹『女のいない男たち』より「イエスタデイ」

    登場人物は、必ず行動をする。作品に登場するからには、 …