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渡部昇一『知的生活の方法』

      2014/08/17

 

 

書店には多くのハウツー本が並んでいるが、この本ほど読者に熱意を持って語りかけてくる方法論の本は無いだろう。

私がこの本と出会うきっかけとなったのは予備校の問題集に引用されているのを見た時だ。

 

「専門書を読んだり、書き物をした後で、新刊のアメリカの評判小説を持って寝床に入り、三十分か一時間、ときとしては二時間、三時間と読む気分は、王侯の地位とも交換できない。もちろん日本の小説でもよいわけだが、日本にいて外国の新刊を楽しめることは、まさに二つの世界を自分の中に持つに等しいのである。こういう小説の読み方をしているときに、よく思うことがある。それは『老齢はこわくないぞ』ということである。」

 

これを見た時に私は衝撃を受けた。浪人生活も二年目に突入していて単調な日々に疲弊し、この先の人生楽しいことあるのだろうかと思っていた時だった。知的生活を行うことで自分の目の前に世界が広がる将来を期待することができた。

 

知的生活とは端的に言うと自分の頭で物事を考え、それを発信していく生活のことである。そのため、知的生活の根幹をなすのは「読書」である。本の序盤では、著者の読書遍歴が紹介されている。読書の仕方について書かれた本は数あれど、読書に対する心構えを書いたものはあまり見たことが無い。著者は読書をしていく上で大切なことは「知的正直」になることだという。それは本を読んで、わかったふりをするのではなく、むしろわかった気になることを怖れさえもする謙虚な精神を持つことを指しているのだ。

 

また、英文学者でもある著者は「知的正直」は英文を読む時も同様であると述べている。

 

「私は英語がわかった気になるのがこわくて原書をよむときは、辞書や文法書を見ている時間の方が、それ自体を読んでいる時間の何倍にもなった。およそ愚劣な読書法であったと思う。しかし結局はそれに耐え抜いたので、英語を正確に読む点では、特に専門書に関しては、欧米の学者にも、あまり劣るところはないと思うにいたった。」

 

情報量が洪水のように日々流れている今日ではこのように一つ一つ丁寧に確認していくような形で進む読書法は歓迎されていない。しかし、理解を深めるには石橋を叩いて渡るような読書法が必要とされるはずだ。

 

この本は確かに知的生活の方法論の本ではあるが、何かの役に立つことを目的として書かれたものではない。自分で考えていく精神の愉悦と解放感が原動力となって知的生活を行うのである。今一度、自分の中にある「好奇心」や「面白さ」の感覚に素直になって知的生活を初めてみてはいかがだろうか。

 

©しんとも

 

 - しんとも

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