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園子温『非道に生きる』

      2014/08/15

 

 

「冷たい熱帯魚」、「自殺サークル」、「ヒミズ」―――。エログロで実験的な映画を作り続け、コアなファンを多く抱える映画監督。この本を読む前、私にとっての園子温のイメージとはそんなものであり、今後の人生で彼の作品を見ることなど無いだろうと考えていた。しかし今作を読んだ今、綴られる彼の「非道」な人生はもちろん、そのにじみ出る鬼才さに興味を持たざるを得ない。

17歳で詩人デビューし後に映画の世界へと進んでゆく中で、生活するために宗教団体に入ったり、集団で東京の街をゲリラ的に占拠してみたりと、彼の行動の自由奔放さには目を見張るばかりである。映画を作るようになってからは自分の映画の宣伝のためならばかなりえげつない方法もとることになるが、その斬新な宣伝方法は結果的に彼の作品の知名度を上げることとなるのだ。

注目しなければならないのは、この本がideainkという『「これからのアイデア」を文字に刻むことを目的としたシリーズ』として刊行されているということである。今作は彼の半生を綴った自伝であるとともに、読者への生き方の提起となっている。

正直、ここに書かれているような「悪目立ち」を許容するような社会性が2010年代の今残っているかどうかは疑問が残る。『「型にはまらない」という型』にはめるような自己啓発本は世の中にあふれているし、異端ぶっても注目されず、むしろ疎まれることが多いだろう。しかし、彼がこの本の中で流している部分、例えば計画的な資金集めであったり、題材についての緻密な調査であったりという膨大な作業をひとつひとつ積み重ね、その上に彼の「非道さ」があるのだという事実は、私たちが見逃してはならないポイントである。

非道な生き方をしながらも自らがただの「むかうむきになってるおっとせい」だと自認している彼だからこそ、独りよがりでない、斬新だが評価される作品を生み出すことができるのだと実感するエッセイである。

 

©きしゆみこ

 

 - きしゆみこ

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