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福岡伸一『生物と無生物のあいだ』

      2014/08/17

 

 

近年めざましい進歩を見せている分子生物学。本書はその分子生物学の基礎となるDNA、細胞、タンパク質の働きについて解説している。しかしこれはただの学問書ではない。滑らかに、美しく綴られる生命メカニズムは鮮やかに躍動し、見えるはずのない細胞や分子の存在を確かに感じさせる。

私達の眼前に現れた細胞やタンパク質、分子はそれぞれに異なるふるまいを見せる。そのふるまい同士が精緻に重なり合うことで1つの反応が起こり、その反応が別の反応を呼び起こす。ふるまい同士の重なりはしかし魔法や不可思議な力で起こるのではない。言われてみれば単純な、けれど簡単には思いつかないアイデアによって生み出される。このトリックをも本書では華麗に解きほぐす。

そして「生命とは何か」という最大の謎についても迫っていく。生命メカニズムは機械のように精緻で大きなネットワークを構築する。しかし機械とは異なり、構築されたシステムを常に破壊し続ける。そして常に新たなシステムを作り続けるのだ。変化し続けることで、その存在を維持する――筆者はこれを「動的平衡」と名付ける。この絶え間ない生と死の流れが生命の本質であると。

本書では生命のふるまいだけではなく、「研究者のふるまい」も丁寧に描かれる。名声を手にすることはなかったものの、人生の全てを研究に費やしDNAの存在を見つけだした者。野望渦巻くアカデミアの中、偶然に鍵を手に入れその構造解明を成し遂げた者。研究職のしがらみからあえて離れ、自由な生活を送っていた者に突如降り立ったひらめき。そして彼らの影を追いかけ、同じ場所に立った筆者。彼らのふるまいはてんでバラバラだが、それらが重なり合うことによって1つの軌跡を描きだす。それは時には蛇行し、時には後戻りしながらも生命という謎に向かって伸びていく。

彼らのふるまいが生命のふるまいと交差したとき、2つはあたかも二重螺旋のように重なり合い、新しい物語が誕生するのだ。

 

©ぶんちょう

 

 - ぶんちょう

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