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チョン・イヒョン『マイスウィートソウル』

      2014/08/16

 

 

30代の女の痛々しさはソウルでも東京でも変わらないんじゃないかしら。

韓国では大衆文化開放政策と共に2004年頃から日本の小説が流入し、小説の年間売り上げ上位100位の内、半数近くを日本の小説が占めることも多々あった。それはなぜだろうか。

以前の韓国の小説は歴史や社会問題を扱うものが多く、小説には知識や教訓が必須だった。そのような常識の中で、韓国の若者達の目には日本の村上春樹や東野圭吾などの気楽に読める恋愛小説や推理小説が魅力的に映った。

そんな折り、韓国の新人作家でも恋愛などを主題とした娯楽的な作品を生み出す者が出てきた。その一人が、『マイスウィートソウル』の著者、チョン・イヒョンである。

主人公オ・ウンスは仕事も恋愛もそれなりにこなしてきた、ごく普通の30代女性である。結婚を意識し、3人の男性を天秤にかけつつも、自分の将来が見えないウンス。

一人で居たい、一人は寂しい、その繰り返しのどっちつかずで自分勝手な女の卑しさが巧みに描写されており、文章を通して伝わってきた。

そういえば最近、月日が流れるのが早くなった気がする21歳の読者の私。30代オンスに共感できる点を文章の中に見つける度に、この痛々しさの固まりのような物体になるまでのタイムリミットが迫っているようでゾッとした。

ウンスと同じ歳になるまで、あとどれくらいの猶予が私には残されているのだろうか。同窓会で、必ず出てくる「結婚」の2文字に嫌気がさすようになったのは、一体いつからだっただろうか。ウンスの姿にそう遠くない自分の未来を重ね、焦りが増した。

ただ、それと同時に、そんな中でも前向きに生きようとするオンスに、これから年を重ねながら生きていかなければならない女の一人として励まされたのも、また事実である。私が生きていかなければならない街は、ソウルではなく東京だけれど。

 

©るりさん

 

 - るりさん

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