夏目漱石『こころ』
2014/08/16
私が高校時代のころ唯一先生と呼ぶに至った人物との出会いはいつ頃であっただろうか。その人は歳も若くなく、初老のマイペースな品のある女性教師であった。そんな彼女と授業で読んだ作品のひとつが夏目漱石の「こころ」であった。
そのとき、私はどのように文章を読むべきか分からなかった。先生は「こころ」を読んでくるようにとのお達しを出された。私としてはあまり読みたくはなかったのだが、結果的にはその文章から織りなされるストーリーについついと先を読んでしまった。最終的に本のあちらこちらに付箋がついている状態になった。
この本は上・中・下という風に章が分かれている。学校の授業でも3つの章を順番に話をまとめていった。まず授業で取り上げられたのは上の部分。ちょうど作品の中で主人公となる「私」と重要な登場人物となる「先生」が出会う部分。私の先生は私と同じように本に付箋をつけていた。これが私と先生の出会いであった。この章は序章にあたりすこしずつ「私」という人物が明らかになって行く部分である。私は私の先生に引きつけられ私は先生に自分のことを話し始めたのはここの授業をやっていたところだろうか。
中の章では帰省した「私」に「先生」からの手紙が届き、その内容から「先生」という人生が語られる部分である。自分は授業を通して私の先生を深く知ることになった。彼女の人生は波瀾万丈で面白くますます引きつけられて行った。私と私の先生の仲はますます親しくなった。
下の章では「先生」の最期が描かれる。このころの授業から、私の先生が学校を退職なさるとの噂が流れ始めた。翌年、私の先生も退職してしまった。そのとき私の中で私の先生は死んだのだ。こうして不思議な調律は保たれた。人は死して永遠の英雄となる。それでも私は今でも先生に託した自分の電話番号に記録が無いか、気にして止まない。
©イケピー
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