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村上泰亮『産業社会の病理』

      2014/08/16

 

 

産業社会は2つの原因によって慢性的な危機を迎える。1つ目は地球的資源の不足という「外なる限界」。2つ目は社会の主要な構成員である大衆が生活からの解放を要求しているという「内なる限界」である。

現在の産業社会は特に「内なる限界」に直面している。大衆が能動的な精神を放棄しはじめたからだ。経済システムは産業社会を支える手段的能動主義と個人主義の価値観自体が追求の目標になったことで前進を続けたが、その一方で手段的能動主義によって豊かな生活を獲得した大衆は、個人主義を多様化させた。換言すれば、産業社会形成の原動力となった2つの価値観が生み出した結果が、それらのバランスを失わせる要因となった。バランスの欠如は生活の貧困をもたらし、大衆社会状況を再び生み出しかねない。

それを防ぐためには、各個人の行為自体を目的化する欲求に目を向けるだけでなく、手段合理的精神の必要性を認識し、両者のバランスを上手く保つ価値観を形成する必要がある。

本書を通じて、私達が生活している社会とは、各システムが組み合わさった産業社会であることがわかる。また、各システムをつないでこの社会を形成しているもの、つまり我々が共有している価値観とシステムの相互作用の関係性をみることで、全体像を見渡せることも理解できる。

著者は、個人主義と手段的能動主義の衝突を防ぐためには、2つの価値観を統合する必要がある。しかし、新しい価値観を生み出すことは、産業社会のなかにいる我々には不可能で、この社会は惰性で動き続けていくと述べている。

著者が指摘しているように、産業社会の領域の中に存在している大衆が解決策を見つけることができないのならば、人間が社会以外に活動する公的領域、私的領域の視点が欠けていることに気づくべきである。それらの視点から社会的領域を見つめなおすことで、その立ち位置を明確にし、新しい価値観を見出すきっかけを作れるのではないか。

 

©しんたろう

 

 - しんたろう

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